エイガールの映画ブログ

色々な映画の感想をみなさんと共有できたらと思います!

映画『マダム・イン・ニューヨーク』の感想

 

            f:id:cinelog:20141106135414p:plain

タイトル

原題は『English Vinglish』。Vinglishという言葉は造語。英語が苦手な主人公シャシ(シュリデヴィ・カプール)を言葉遊びで表現しているのだろうか。これを訳することはできないため、邦題は主婦のシャシがニューヨークへ初めてひとりで行くことにフォーカスしつけられたと考えられる。

 

ストーリー

インドで良妻賢母として2人の子どもを育て、専業主婦をするシャシ。料理の腕前は相当なものでインドのお菓子ラドゥ(インドで結婚式やヒンドゥー教の行事といったお祝いの席に出される菓子で、ヒヨコ豆の粉に砂糖や澄ましバター等を練り込み団子状にして揚げたもの)を作り、近所に配る。シャシの夫サティシュ(アルディ・フセイン)はビジネスマンで英語も堪能。シャシの娘は学校で英語を学ぶ優等生。英語を話せない母シャシをはずかしく感じ、シャシとの衝突も多い。そんな中、シャシの姪がニューヨークで結婚式をするという。その手伝いをするため単身で5週間、ニューヨークへ渡ることとなったシャシ。子どもと夫を置いて出かけることにためらうシャシ。英語も話せない。しかし、姪も大事な家族であるためニューヨークへ渡ることを決意する。

ニューヨークへ渡ったシャシはコーヒーショップで上手く注文をすることもできず、途方に暮れる。そんなシャシは4週間で英語が話せるようになるという広告を目にし、姉や姪に秘密で英会話教室に通いだす。英会話教室でメキシコ、フランス、中国など多国籍の生徒に囲まれ、ゲイの先生に英語を習う。先生に褒められ、仲間からも親しまれるシャシはニューヨークという知らない土地で自分の居場所を見つける。その中でもフランス人のローラン(メーディ・ネブー)はコーヒーショップでシャシに一目ぼれしており、フランス流の愛を語る。恋愛に発展はしないが、シャシは夫サティシュから期待できないロマンティックな言葉にときめく。

英会話教室の最終試験である5分間スピーチと姪の結婚式の日が重なってしまうが、先生とクラスメイトも式に参加する。シャシの姪とその夫へのスピーチが最終試験の代わりとなり、シャシは英語に対する自信をつけるとともに自分への自信も取り戻す。

 

印象に残ったシーンと台詞

★シャシと夫サティシュの夫婦関係

インドの古風な夫婦がどのようなものかわからないが、日本の古風な夫婦と似ている気がした。夫が働き、妻は家のことをする。妻は前に出しゃばらず、一歩下がってついていく。シャシが得意料理のラドゥを近所に配ることもサティシュは気に入らないようだ。英会話でならった”entrepreneur”(企業家)なんて言葉はもってのほか。しまいには、”My wife, she was born to make Ladoo, haha!”(私の妻はラドゥを作るために生まれてきたんだよ!)とジョークを言う。シャシは反論しないが、普通の妻であれば怒るだろう。

★シャシ役シュリデヴィ・カプールの魅力

大きな瞳と彫りの深い顔立ち、艶のあるサラサラな髪が魅力的なシュリデヴィ。出演当時50歳とはとても思えない。インドの伝統的な民族衣装サリーの隙間から見えるボディラインもとても美しい。

★おしゃれなサリー

f:id:cinelog:20141106135448p:plainf:id:cinelog:20141106135458p:plainf:id:cinelog:20141106135509p:plain

インドの伝統的な民族衣装サリーというと、エキゾチックな柄でいかにもインドらしいものをイメージする。しかし、本作に出てくる数々のサリーは淡いブルー、紫、花柄、ドットなど現代のファッションスタイルを取り入れている。毎日異なるサリーを着るシャシはとてもお洒落。ファッションの発信地ニューヨークでも十分通用する。サリーの着方はわからないが、腰のあたりは肌が露出しているため伝統を兼ね備えながらセクシーな部分もある素敵な民族衣装。こんなサリーだったら着てみたい!と多くの女性が思ったはず。

★ガーデンウェディング

インドの伝統とアメリカらしいガーデンウェディングが融合したウェディングパーティー。ケータリングの力も借りるが、シャシがお菓子を手作りしたり、参列者用の椅子にリボンを巻いたり、丸いランタンのような装飾をしたりと手作りの要素もある。色はパステルカラーで統一され、ガーデンウェディングにぴったりの温かい雰囲気を作り上げている。

★シャシのウェディングスピーチ

結婚式で急にスピーチを求められるシャシ。シャシが英語の勉強をしていることを知らない夫サティシュはシャシの代わりにスピーチをしようとする。しかし、シャシは”May I?”と英会話教室で習ったフレーズをつかって夫を遮りスピーチを始める。シャシの夫婦としての経験から夫婦間の平等、尊重、敬意を大切にしてほしいという内容は参列者すべての心に響いた。夫サティシュもいままでの亭主関白な態度を反省した様子。

★インド映画らしさ

映画の随所にはさまれるインドのポップな曲はリズミカルで歌詞が面白い。インド映画の特徴であるダンスも必見。

 

まとめ

女性のサクセスストーリーを主題とする映画はたくさんあるが、主婦にフォーカスし、国をまたいで外の世界に出るところが面白い。インドという独特の文化も特徴的である。日本の文化との比較もできる。映画を見ているうちにいつの間にかシャシの応援団となってしまう。シャシはニューヨークでの新しい経験により成長したのではない。もともとシャシは始めたことは最後までやり通すという強い意志を持っていた。新しい世界へ飛び込む勇気も持っていた。英語の勉強をしたいという気持ちもどこか心の奥底にあったのだろう。シャシになかったのは新しいことを始める環境とチャンスである。”It’s never too late to learn”(学ぶのに遅すぎることはない)ということわざにぴったりの本作。前向きな気持ちになりたいときにおすすめ。