映画『6才のボクが、大人になるまで。』の感想
タイトル
原題は『BOYHOOD』。少年時代という意味。主人公メイソン(エラー・コルトレーン)が6才のときから18才になるまでを描く本作。アメリカでは高校を卒業すると大人として扱われるため(ちなみに飲酒できるのは21才から)、邦題は『6才のボクが、大人になるまで。』になったと考えられる。
ストーリー
実は、これといった起承転結のストーリーがない本作。主人公メイソンの目線で描かれる家族の様子を描く。家族はお姉ちゃんのサマンサ(ローレライ・リンクレイター)、ママのオリヴィア(パトリシア・アークエット)、パパ(イーサン・ホーク)。メイソンが6才のときに両親の不仲が原因でメイソン・サマンサ・ママはテキサスからヒューストンのおばあちゃん(リビー・ビラーリ)のところへ引っ越す。ヒューストンに行ってもパパは会いに来てメイソンとサマンサをボウリングに連れて行ってくれる。ママは大学へ復学して修士号の取得を目指す。ママは大学の教授と再婚することになり、新しいパパのビル(マルコ・ペレーラ)の子ども達と一緒に生活し、新しい家族ができる。そんな中でもパパは会いに来てくれる。新しいパパはアルコール依存症になり、ママと子どもに暴力を振るう。ママはメイソンとサマンサを連れてオースティン近郊の小さな町へ引っ越す。そこでママは教壇に立ち、メイソンとサマンサを養う。メイソンが15歳の誕生日にママは教え子のひとりであるジムと一緒に暮らし始める。他方でパパはアニーと結婚し、赤ちゃんが生まれる。ジムの勧めでカメラに夢中になったメイソンは高校で賞をとり、大学でも写真を専攻する。ママはジムとも上手くいかなくなり、メイソンの卒業パーティーにはパパが来る。大学の寮へ引っ越し、新たな生活を始めるメイソン…。
印象に残ったシーンと台詞
★するどいメイソン
大学でママの授業を一緒に受講するメイソンはママと新しいパパになるビルの関係に気づく。ボウリング場で偶然会ったアニーとパパの関係にも気づく。感謝祭ではママとジムが親しげに話す様子を目にして何かを感じる。親が思っているより子どもは親の恋愛関係にするどい。
※当時大ヒットしていたハリーポッターの本をママに読んでもらうメイソンとサマンサ
★優秀なお姉ちゃん
宿題の期限は守らずゲームに夢中なメイソンに対してオールAの優秀なお姉ちゃん。その発言も小さいときからしっかりしている。ヒューストンへ引っ越すときも友達がいるからママだけヒューストンに行って、自分とメイソンはテキサスに残ると言う。しゃべり方は子どもだけについ笑ってしまう。
※左からお姉ちゃんのサマンサ、パパ、メイソン
★成長しないのは大人?
両親に振り回されながらも成長していくメイソンとサマンサ。子どもを養うのに必死なママに対して子ども達は至って冷静。ママが支離滅裂なことを言ってもメイソンは冷静に対応する。メイソンが6才のときから定職についていない様子のパパはメイソンの卒業パーティーでも財布にお金が入っていない。そんなパパでも子どもに対する愛情は人一倍で恋愛のアドバイスもする。子ども達にも好かれている。映画を通して、子どもは成長するのに大人は成長していない!と思ってしまった。
※18才のメイソン。ひげを伸ばして大人びている。
まとめ
何といっても12年もの年月を同じキャストが演じる点は見どころ。監督は「時間」をテーマとすることで有名なリチャード・リンクレイター。他の映画の様に年月を超えたシーンでキャストを一致させる必要がない。また、成長していく役者のキャラクターを映画のキャラクターにも反映させているため、不自然さがない。当然ながら後姿や歩き方など役者の特徴も一致する。起承転結の映画を期待する人にはおすすめできないが、家族の一員となって成長を見守っていくのは楽しい本作。