映画『イフ・アイ・ステイ』の感想
タイトル
R・J・CUTLERが監督する小説『if i stay』の映像化。翻訳された本の邦題は『ミアの選択』。日本で公開されたときの映画のタイトルは『イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所』。『if i stay』からは映画の内容がわからないため、愛が大きなテーマとなっていることを示すために副題がつけられ、『if i stay』もカタカナ表記に?
ストーリー
17歳でチェロの才能がある高校生MIA HALL(CHLOE GRACE MORETZ)が家族とともに車の交通事故に遭い、生死を彷徨う様子を幽体離脱した(といっても幽霊のようではSF映画になってしまうため、壁を通り抜けたりはしない)。MIAの目線で描くというもの。生きるか死ぬかはMIAに選択肢があるかのように描かれている。MIA以外の家族は死んでしまうことが予告にも公開されているが、母CATHERINE(MIREILLE ENO)が即死、父DENNY(JOSHUA LEONARD)・弟TEDDY(JACOB DANIES)は病院で順に亡くなってしまうため、ひとりずつ家族が減っていくごとにMIAの選択は死を選ぶことに傾いてしまう。しかし、MIAの父方の祖父母は健在で親友KIM(LIANA LIBERATO)も彼氏ADAM(JAMIE BLACKLEY)もいる。親友KIM、祖父(STACY KEACH)、彼氏ADAMが昏睡状態のMIAに語りかける姿を見ながらMIAはこれから生き続けるかどうか選択することとなる。
印象に残ったシーンと台詞
★Halloweenの仮装
クラシック好きのMIAが元パンクな母CATHERINEのアドバイスを得て往年の女性ロックスターに扮する。
他方、ロックミュージシャンのADAMはMIAに合わせてベートーベンに扮する。
お互いを想いあう気持ちがあらわれた仮装。
★“…sometimes choices make you.”
父DENNYの台詞。予告にもある。人生でたくさんある選択が自分を成長させる、という深い意味のある台詞。ロックミュージシャンから英語教師への転職をした父ならでは。
★“I really hate you.”
MIAが何度か言う台詞。喧嘩のときは強く言うのかもしれないが、力を抜いて言うこの台詞は大嫌いと言いながらも心の中では仕方ない(もしかしたら少し嬉しいときもある?)という感じ。
ADAMがMIAと仲直りのためにMIAの部屋の天井をジュリアード音楽院の実技試験の会場と似せ、ギターとチェロのブレスレッドを渡した後にADAMを許す言葉としてつかわれる。チェロは独奏楽器ではないということにミアが気付いたガーデンパーティーのときもチェロを持ってきた父DENNYとADAMに言う。
★“Today is the greatest day I’ve ever known”
今日が今までで最高の日という歌をみんなで合唱する。家族と仲間が一体となってたき火を囲む素敵なシーン。同時に家族を失ったMIAはもうこのような日が訪れないと気付く。
★”Please stay...”
お願い、逝かないで。ADAMが昏睡中のMIAに言う台詞。映画のタイトルともリンク。映画でよくあるシーンとしては、銃で撃たれた人に”Stay with me!”(しっかり!)というのがありますよね。
その他
★ロックな父DENNYと母CATHERINEは自分に自信のないMIAが初恋に一歩踏み出す勇気を与える様子が微笑ましい。
★祖父が昏睡中のMIAに語りかけるシーンでは名演が光る。プロデューサーのALISON GREENSPANも絶賛。
★MIAの正統派衣装は『JUNO』(07/監督:ジェイソン・ライトマン)で注目されたMONIQUE PRUDHOMME。
★ADAM役のJAMIE BLACKLEYは英国俳優。インタビューはイギリス英語。演技力、歌、ロックスターとしてのカリスマ性、CHLOEとの相性、すべてを備えた俳優と監督R・J・CUTLERも絶賛。
★音楽も重要な要素となっている本作。映像化する上で監督R・J・CUTLERは「好きな音楽がキャラクターの個性を決める」とメインキャストの一人ひとりにそれぞれの約が聴いているであろう楽曲をまとめたMP3プレイヤーを渡した。
まとめ
監督R・J・CUTLERはドキュメンタリーで数々の賞を受賞しているため、本作はフィクションではあるが、MIAの高校生活とその家族の様子を自然に描いている。事故に遭った日からADAMとの出会い、ジュリアード音楽院への入試を振り返るため、もう会うことのない家族との記憶を辿るシーンはとても切ない気持ちになる。映画をみている人はいつの間にか自分をMIAに置き換えて映画の世界に入ってしまうのではないか。MIAの家族やADAM、親友のKIMを自分の近しい誰かに置き換えてその台詞をきいてしまうのではないか。それくらい引き込まれる世界を創った役者・監督・映画に携わるすべてのスタッフの思いが伝わる作品。